余命宣告を受け入れられず、どうしていいか分からない日々
自分らしく、かっこよく、悔いのなく生きた人生
  • H様(仮名)
  • 居住地:東京都世田谷区
  • 年齢:70代
  • 性別:女性
  • 診断名/症状:脊椎腫瘍/筋力低下・感覚障害
  • 生活環境:独居、敷地内に娘さまご夫婦在住
  • 発症からの期間:5年

ご本人の希望

「外を杖で歩けるようになること」

ご家族の希望

娘「元気になって欲しい」
 「できたら外に出かけられるようになりたい」

OTキャンプでの成果

当初の状況
クライアントは、脊髄腫瘍の手術後から生じてたという右下肢に不全麻痺と感覚障害を抱え、さらにヘルパーとの歩行練習中に転倒されたことをきっかけに「怖い」と恐怖心が強まり、完全に車いす生活となっていました。

「近所の人に見られたくない」と話し、病院や通所以外は庭にすら出ない閉じこもり状態。
以前は華道・茶道の講師として活動していましたが、活動はすべて中断され、生活全般でヘルパーの支援を必要としていました。
娘さんからの外出の提案もすべて拒否されていました。

ご希望は、「外を杖で歩けるようになる」こと。
すでに週4回リハビリ(通所2回・訪問2回)を受け、機能回復を第一に取り組んでいましたが、改善は見られず、焦りと不安の中で時間だけが過ぎていく状況でした。
こうした中で相談を受け、介入を開始しました。


サポート内容
まず、クライアントの不安や疑問を丁寧に聴き取り、納得できる説明を重ねることで信頼関係を構築。
ただ「リハビリを受ける」から、「自分で選び、行動するリハビリ」へと主体的な取り組みを促しました。

座位保持も難しく、負荷が強いと体調が数日にわたり影響する繊細な状態。
身体と心の両面に配慮し、最適な負荷量とペースを調整しながらプログラムを立案・フォローしました。
また、家族やヘルパーにも介助方法を指導し、生活全体で活動量を安全に高めていけるようサポートしました。


趣味・社会参加への再挑戦
目標:「杖で外を歩きたい」

クライアントの希望である「杖で外を歩きたい」という目標に加え、興味や人とのつながりを取り戻すことをテーマにサポートを実施。

長年中断していた華道・茶道を再開するために、車いすでも行えるよう環境を整備し、再び自宅で教室を開催。
花を生ける喜び、人と関わる喜びが少しずつ戻っていきました。


ある日、フィードバックノートが切れそうになった際、OTから「車でノートを買いに行きませんか?」と提案。
クライアントはすぐに「行きたい」と反応し、さらに「通所で知り合った友人に会いたい」と自ら電話をかけて約束。
この自然な意欲が生まれた瞬間を逃さず、タイムリーにかつ自然に移せた実践は、大きな自信となり、以降、自ら外出や活動を提案するようになる転機となりました。


協働した実践例
・華道・茶道の再開
・庭にでてお花をいじること
・旅行先で車の窓から見た素晴らしい景色を、キャンバスに水彩画で描くこと
・書道で今年の目標を書くこと
・YouTubeで見たというアップルパイを一緒に作ること
・お孫さんの結婚式同行

コロナ禍でもオンラインでナラティブアプローチを継続し、身体面だけでなく心の状態にも寄り添いながら、機能偏重にならないようそのバランスをフォローし続けました。

その他、支援内容
・車いすの選定・業者仲介
・ベッド購入時の選定・調整
・家屋改修(浴室・階段昇降機・トイレ手すり・座面調整など)のコーディネートと仲介
・かかりつけ医・ケアマネとの連携・情報共有
・外出先・宿泊先での介助者への事前伝達・環境準備


サポートの成果
機能に偏って受け身だったクライアントの閉じこもり生活は大きく変化。
現在は、気づくと車いすで外出することに抵抗がなくなり、趣味の華道・茶道の教室に楽しく参加できるようになりました。
また、9年ぶりに長女夫婦との温泉旅行や定期的なお出かけ、お孫さんの結婚式に参加など、生活の充実感、生活の幅が広がっています。

また、
・ご家族とのコミュニケーションが良好に
・ご兄弟との交流も再開
・身体機能が向上し、トイレや台所での作業などが自立、立位保持も可能になった
・外出や新しい活動への挑戦に前向きになる
といった変化が見られ、ご自身でも振り返る場面がありました。

「歩くことに囚われず、毎日を楽しみたい」
「できることを、できるうちにやりたい」
「家族や周囲のためにも役立ちたい」
「今が一番幸せ」


気持ちの浮き沈みはありますが、その幅は自らが記録したグラフで見ても格段に小さくなりました。
いまでは、かつて閉じこもり、機能回復だけを追い求めていた頃とはまったく異なる表情を見せています。
“意味ある作業”を中心に据えたプログラムの積み重ねによって、心身ともに充実した日々を送り、機能回復を超えて「生きる力」を取り戻した事例のひとつです。




利用頻度:月2回(90分/回実践)